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第2回:「地域ぐるみ」で防護柵を管理する!

更新日:2024年10月1日更新 印刷ページ表示

1.はじめに

 前回は、防護柵と捕獲を両輪とした被害対策の有効性についてお話しました。そこで今回は、まず防護柵について効果的に運用するためのポイントと、効果を維持するために必要な作業のお話をします。カギを握るのは野生動物の心理です。

 防護柵は柵の内側に入りたいと願う動物の侵入を防ぐための施設です。動物にしてみれば、わざわざ柵を越えて侵入を果たすにはそれなりの労力がかかりますし、生命の危険も伴います。にもかかわらず、柵を越えるとき、そこには2つの理由があると考えられます。つまり「柵の侵入が、それほど大きな障害にならない場合」、あるいは「障害を乗り越えてでも侵入したいと願う強い欲求がある場合」です。

 裏を返せば、防護柵を効果的に活用するために必要なことは、こうした動物の心理を踏まえた対策を講ずることだと言えます。

2.動物の目線に立って考える

 柵を設置する際、重要なのは動物の目線です。マニュアル等には、動物種ごとに効果のある柵の仕様が示されていますが、これらはあくまでも目安であり、設置の際には山から下りてくる動物の目線に立って柵のスソや継ぎ目に狙われやすい隙間がないか、傾斜地などで跳びこみやすくなっている場所はないか確認する必要があります。点検や補修でもポイントは同じです。

 柵を越えて動物が侵入した時は、そこが突破された原因を究明し、適切な補修、補強を施すことが重要です。究極的には、動物の目線はその行動に習うしかないのです。

図1 [PDFファイル/1.06MB]図2 [PDFファイル/1.32MB]

3. ルート設計と巡視体制の必要性

 次に重要な事実は、柵は壊れるものだという認識です。倒木や落枝、土砂崩れ、大水など、柵が壊れる機会はいくらでもあります→(写真3挿入)。動物は柵内に侵入できるチャンスを決して見逃さないので、人間が柵の破損に気づき修復するまで被害は出続けます。

 このため柵の維持管理には、素早く柵の異常を検知できるルート設計と巡視体制が不可欠です。とくに集落柵では、定期的に柵を点検・補修するための体制作りが重要です。

図3 [PDFファイル/1.47MB]

4.執着心を抱かせない

 最後のポイントは、動物に柵内の魅力を教えないことです。とくに農地では、被害にあってから柵を設置するケースが多く見られますが、一度おいしい農作物の味を覚えた動物は、何としてでも柵を突破しようと頑張るので侵入リスクが高まります。動物種によって、いつ、どの作物が狙われるかは決まっているので、被害にあう前に予防的に柵を整備することが重要です。

株式会社野生鳥獣対策連携センター

専務取締役 阿部 豪

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