○那珂川市こどもの権利条例
(令和3年3月3日条例第5号)
改正
令和5年10月2日条例第30号
こどもは、無限の可能性に満ちた、かけがえのない存在です。
こどもは、日本国憲法と児童の権利に関する条約において、生まれながらにして成長・発達する権利が保障されています。充実した生活を送り成長・発達していくことで、自分の可能性に気づき、自信をもち、そして主体的に生きていくことができるようになります。
こどもは、家庭・育ち学ぶ施設・地域のあらゆる場面において、大人との関係性の中で生きています。
大人は、こどもを単なる保護の対象ではなく、権利の主体として認め、こどもと、その子の発達段階に応じたコミュニケーションを図る中でこどもにとって最もよいことを発見し、それを実現することが求められています。こどもと対等の立場で話を聴き、それに誠実に答えることの積み重ねによって、こども自身が「自分は大切にされているのだ」という実感をもつようにすることが大切です。
那珂川市は、市民とともに、こどもの権利を保障し、こどもたちが平和と四季折々の自然のなかで、心身ともに健やかに成長・発達することができる、こどもにやさしいまちづくりを未来に向かって進めていきます。
目次
第1章 総則(第1条-第3条)
第2章 こどもにとって大切な権利(第4条-第8条)
第3章 こどもの権利の保障(第9条-第12条)
第4章 こどもにやさしいまちづくりの推進(第13条-第20条)
第5章 こどもの権利の侵害に対する相談・救済(第21条-第26条)
第6章 こどもに関する施策の推進及び検証(第27条-第31条)
第7章 雑則(第32条)
附則
第1章 総則
(目的)
第1条
この条例は、社会全体がこどもの権利を保障し、こどもの育ちを支え合う仕組みを定めることにより、こどもが充実した生活を送り、心身ともに健やかに成長・発達することができる、こどもにやさしいまちを実現することを目的とします。
(定義)
第2条
この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによります。
(1)
こども 市内に居住し、通学し、又は通勤する18歳未満の者その他これらの者と等しく権利を認めることが適当である者をいいます。
(2)
保護者 こどもの親権者、児童福祉法(昭和22年法律第164号)に規定する里親その他親権者に代わりこどもを養育する者をいいます。
(3)
育ち学ぶ施設 市内に所在する児童福祉法に規定する児童福祉施設、学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する学校その他こどもが育ち又は学びを目的として通学、通所又は入所する施設をいいます。
(4)
市民 市内に居住し、又は通勤する者をいいます。
(5)
事業者 市内で事業活動を行う個人及び法人その他の団体をいいます。
(基本理念)
第3条
こどもの権利の保障は、次に掲げる理念を基本として進められなければなりません。
(1)
こどもを権利の主体として尊重すること。
(2)
こどもにとって最もよいことを第一に考えること。
(3)
こどもの成長・発達に配慮すること。
第2章 こどもにとって大切な権利
(自分の権利及び他者の権利の尊重)
第4条
こどもは、この章に定める、こどもにとって大切な権利(以下「こどもの権利」といいます。)の保障を求めることができます。
2
こどもは、自分の権利を大切にすることができます。
3
こどもは、自分の権利が尊重されるのと同様に、他者の権利を尊重するように努めなければなりません。
(安心して生きる権利)
第5条
こどもは、安心して生きるために、次に掲げる権利が保障されます。
(1)
命が守られ、平和及び安全な環境のもとに暮らすこと。
(2)
愛情をもって大切に育てられること。
(3)
健康的な生活を送り、適切な医療を受けること。
(4)
いかなる差別及び不当な不利益も受けないこと。
(5)
困っていること又は不安に思っていることを相談すること。
(6)
虐待、体罰及びいじめから心身が守られること。
(7)
プライバシー及び誇りが守られること。
(自分らしく生きる権利)
第6条
こどもは、自分らしく生きるために、次に掲げる権利が保障されます。
(1)
自分の存在を認められ、尊重されること。
(2)
自分の気持ち又は考えをもつこと。
(3)
自分の気持ち又は考えを聴いてもらうこと。
(4)
自分の可能性に挑戦すること。
(5)
安心できる場所で過ごし、自由な時間をもつこと。
(心豊かに育つ権利)
第7条
こどもは、心豊かに育つために、次に掲げる権利が保障されます。
(1)
遊ぶこと。
(2)
人権及び平和の大切さを学ぶこと。
(3)
自ら学びたいことを学ぶこと。
(4)
自然、芸術、文化及びスポーツに親しむこと。
(意見を表明し参加する権利)
第8条
こどもは、家庭、育ち学ぶ施設及び地域に主体的に参加するために、次に掲げる権利が保障されます。
(1)
自分の気持ち又は考えを表明し、尊重されること。
(2)
意思決定の場及び社会活動に参加すること。
(3)
必要な情報を大人又は社会に求め、集めること。
(4)
仲間をつくり、集まること。
第3章 こどもの権利の保障
(家庭の役割)
第9条
保護者は、こどもにとって最も大切な存在であるとともに、こどもを心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任があります。
2
保護者は、こどもの権利を保障し、こどもと発達段階に応じたコミュニケーションを図る中で、こどもにとって最もよいことを第一に考えなければなりません。
(育ち学ぶ施設の役割)
第10条
育ち学ぶ施設の管理者及び職員(以下「育ち学ぶ施設関係者」といいます。)は、こどもの権利を保障し、こどもが主体的に考える力を身に付けられるように努めなければなりません。
2
育ち学ぶ施設関係者は、こどもとコミュニケーションを図り、こどもの気持ち又は考えを受け止め、相談に応じるように努めなければなりません。
(地域の役割)
第11条
市民及び事業者は、こどもの権利を保障し、こどもを地域の一員として認め、こどもを温かく見守り、こどもが安心して過ごすことができるように努めなければなりません。
(虐待、体罰及びいじめの禁止)
第12条
何人も、こどもに虐待、体罰及びいじめを行ってはなりません。
2
何人も、こどもへの虐待、体罰及びいじめを許してはなりません。
第4章 こどもにやさしいまちづくりの推進
(こどもの権利の周知及び学びの支援)
第13条
市は、この条例について、育ち学ぶ施設関係者、市民及び事業者に広く知らせます。
2
市は、家庭、育ち学ぶ施設及び地域において、こどもが自分の権利及び他者の権利を学び、お互いに尊重し合うことができるように支援します。
3
市は、育ち学ぶ施設関係者、市民及び事業者がこどもの権利について理解を深めることができるように支援します。
(意見表明・参加の機会の促進)
第14条
市、育ち学ぶ施設関係者、市民及び事業者は、こどもの居場所・遊び場づくり等について、こどもが気持ち又は考えを表明したり、参加したりする機会を設けるように努めるものとします。
2
市、育ち学ぶ施設関係者、市民及び事業者は、こどもの意見表明及び参加を促進するために、こどもの気持ち又は考えを尊重するとともに、こどもの主体的な活動の奨励及び支援に努めるものとします。
(こどもの居場所・遊び場づくり)
第15条
市、育ち学ぶ施設関係者、市民及び事業者は、こどもが安心して過ごすことのできる居場所・遊び場づくりに努めるものとします。
2
市、育ち学ぶ施設関係者、市民及び事業者は、こどもが様々な世代の人々とふれあうことのできる機会の提供に努めるものとします。
3
市、育ち学ぶ施設関係者、市民及び事業者は、こどもが多様で豊かな体験をすることのできる機会の提供に努めるものとします。
4
市、育ち学ぶ施設関係者、市民及び事業者は、自然を守り、こどもが自然に親しむことのできる機会の提供に努めるものとします。
(虐待、体罰及びいじめに対する取組)
第16条
市は、こどもに対する虐待、体罰及びいじめの予防及び早期発見に取り組みます。
2
こどもは、自らが虐待、体罰又はいじめ(以下「虐待等」といいます。)を受けたとき、若しくは虐待等を受けていると思われるこどもを発見したときは、市又は関係機関に相談することができます。
3
育ち学ぶ施設関係者、市民及び事業者は、虐待を受けていると思われるこどもを発見したときは、直ちに市又は関係機関に通報しなければなりません。
4
市又は育ち学ぶ施設関係者は、虐待等を受けたこどもを迅速かつ適切に救済するために、関係機関と協力して、必要な支援をします。
(有害・危険な環境からの保護)
第17条
何人も、こどもが次に掲げるものに接することがないようにしなければなりません。
(1)
環境たばこ煙及び環境汚染物質
(2)
喫煙、飲酒及び薬物の乱用
(3)
性的搾取、性的虐待等の被害
(4)
過激な暴力、性等の有害な情報
(5)
過剰なメディア視聴
(子育て家庭への支援)
第18条
市は、保護者が安心して子育てができ、その役割を果たせるように支援します。
2
育ち学ぶ施設関係者、市民及び事業者は、保護者が安心して子育てをすることができるように支援に努めるものとします。
(支援が必要なこども・家庭への支援)
第19条
市、育ち学ぶ施設関係者、市民及び事業者は、虐待を受けたこども等、支援を必要とするこども及びその家庭に配慮し、適切な支援に努めるものとします。
(相互の連携・協力)
第20条
市、育ち学ぶ施設関係者、市民及び事業者は、こどもにやさしいまちづくりの推進に関して、相互に連携・協力して、こどもの権利の保障に努めるものとします。
第5章 こどもの権利の侵害に対する相談・救済
(相談・救済)
第21条
市は、こども又はその関係者がこどもの権利の侵害について相談することができる場及び機会を設けます。
2
市は、相談内容又はこどもが置かれている状況に応じ、こどもの権利の救済が必要なときは、育ち学ぶ施設関係者及び関係機関と相互に連携して、こどもの権利の救済又は心身の回復を図るために必要な支援をします。
(こどもの権利救済委員会の設置)
第22条
市は、こどもの権利の侵害を受けたこどもに対して、迅速かつ適切な救済を図るとともに、心身の回復を支援するため、那珂川市こどもの権利救済委員会(以下「救済委員会」といいます。)を設置します。
2
こども又はその関係者は、救済委員会に対し、こどもの権利の侵害について救済を求めることができます。
3
救済委員会は、こどもの権利に関して識見を有する者のうちから市長が委嘱し、3人以内の委員をもって組織します。
4
救済委員会の委員(以下「救済委員」といいます。)の任期は2年とし、再任を妨げません。
ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とします。
5
救済委員は、公平かつ公正にその職務を遂行しなければなりません。
6
救済委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはなりません。その職を離れた後も同様とします。
7
救済委員は、任期の満了以外は、その意に反して職を解かれません。
ただし、市長は、救済委員が心身の故障によりその職務ができないと判断したとき、又は救済委員としてふさわしくない行為があると判断したときは、その職を解くことができます。
(救済委員会の職務)
第23条
救済委員会は、次に掲げる職務を行います。
(1)
こどもの権利の侵害について、こども又はその関係者から相談を受け、その救済及び権利の回復のために必要な情報を収集し、助言又は支援をすること。
(2)
権利の侵害を受けているこどもについて、本人又はその関係者から救済の申立てを受け、事実の調査又は救済のための調整をすること。
(3)
こどもが権利の侵害を受けていると認めるときに、自らの判断で調査又は救済のための調整をすること。
(4)
調査又は救済のための調整の結果、必要と認めるときに、こどもの権利を侵害した者に対して、是正措置を講ずるよう勧告すること、又は制度の改善を要請すること(以下「勧告又は要請」といいます。)。
(5)
勧告又は要請を受けた者に対して、是正措置又は制度の改善の状況の報告を求めること、及びその内容を申立人に伝えること。
(救済委員会への協力)
第24条
市、育ち学ぶ施設関係者、市民及び事業者は、救済委員会の職務に協力するよう努めなければなりません。
(勧告又は要請への対応)
第25条
市の機関は、救済委員会から勧告又は要請を受けたときは、その対応状況を救済委員会に報告しなければなりません。
2
市の機関以外の者は、救済委員会から勧告又は要請を受けたときは、その対応状況を救済委員会に報告するよう努めなければなりません。
(報酬及び費用弁償)
第26条
救済委員には、別に条例の定めるところにより、報酬及び費用弁償を支給します。
第6章 こどもに関する施策の推進及び検証
(施策の推進)
第27条
市は、こどもの権利を保障し、この条例に規定する事項を計画的に進めるため、行動計画を定めます。
2
行動計画は、必要に応じて、その内容を見直します。
3
市は、行動計画を策定し、又は見直しをするときは、こども、市民及び那珂川市こどもにやさしいまちづくり推進会議の意見を聴きます。
4
市は、行動計画を策定し、又は見直しをしたときは、速やかにその内容を公表します。
(こどもにやさしいまちづくり推進会議の設置)
第28条
市は、行動計画に関することについて、多角的な意見を聴くため、那珂川市こどもにやさしいまちづくり推進会議(以下「推進会議」といいます。)を設置します。
2
推進会議は、次に掲げる者のうちから市長が委嘱し、9人以内の委員をもって組織します。
(1)
有識者 1人
(2)
こどもの権利、福祉、教育等に関して知識又は経験のある者 6人以内
(3)
公募による市民 2人以内
3
推進会議の委員の任期は2年とし、再任を妨げません。
ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とします。
(推進会議の職務)
第29条
推進会議は、市長その他の執行機関の求めに応じ、次に掲げることを調査審議します。
(1)
行動計画の策定又は見直しに関すること。
(2)
行動計画の実施状況に関すること。
(3)
その他施策の推進に関すること。
2
推進会議は、前項各号に掲げる事務のほか、子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)第72条第1項各号の事務を行います。
3
推進会議は、必要に応じて、委員以外の者に出席を求め、意見を聴くことができます。
(報告及び公表)
第30条
推進会議は、市長その他の執行機関の求めに応じ、調査審議したときは、その結果を市長その他の執行機関に報告します。
2
市長その他の執行機関は、推進会議から報告を受けたときは、その内容を公表します。
3
市長その他の執行機関は、推進会議の報告を尊重し、必要な措置をとります。
(報酬及び費用弁償)
第31条
推進会議の委員には、別に条例の定めるところにより、報酬及び費用弁償を支給します。
第7章 雑則
(委任)
第32条
この条例に定めるもののほか、必要な事項は、市長が規則で定めます。
附 則
(施行期日)
1
この条例は、令和3年4月1日から施行します。
ただし、第6章及び次項の規定は、令和3年9月27日から施行します。
(那珂川市子育て支援推進協議会設置条例の廃止)
2
那珂川市子育て支援推進協議会設置条例(平成23年条例第12号)は、廃止します。
(経過措置)
3
この条例の施行の際現に策定され、運用されている那珂川市次世代育成支援地域行動計画については、第27条の規定に基づき策定されたものとみなします。
附 則(令和5年10月2日条例第30号)
この条例は、公布の日から施行する。